「かんざしと櫛ってどう違うの?」
2009年 01月 22日
いやまあ、そもそもが違うというかなんというか…結論を言ってしまうと、
「日本には髪をとかす櫛と髪に飾る櫛の2種類があるのです」と
いうことになります。
そもそも、かんざしのルーツは一本の棒でした。
一本の棒には呪力が宿ると信じられていたようですし、皮を剥いだ木の棒
には、防虫に役立つなどの効果があった為とも言われています。
そしてそれをたくさん集めれば、更なる効果が期待できる訳で、複数の木の
棒を紐で集めたもの、それが櫛の原形と言われています。
やがて刃物が発達し、板材が取れるようになると、それを加工して一体型の
丈夫で使いやすい櫛が製作されるようになったのです。
ここまで櫛は髪をまとめるものから髪をとかすものへと変化してゆきました。
平安時代頃には髪の毛そのものの美しさを貴んだため、髪の美しさを保つ
ために櫛は無くてはならない存在だったことでしょう。
それから戦国時代になると、髪型はまとめ髪が中心の実用重視となりますが、
時代が変わり、江戸時代になると戦乱も治まり、次第に文化的な発展をして
いく地盤ができてゆくのです。
江戸時代中期頃になると、髪型もかなり複雑になってきます。
そこで何故か髪をまとめる道具だった笄(こうがい)が、髪に飾られるように
なってゆきます。
このような傾向の一環だったのか、髪をとかす道具だった櫛までもが髪に
飾られるようになったのです。
しかも、笄と同様に日本髪という特殊な髪型のために合わせて変形させられて
しまいまして、飾り用の櫛には端まで歯がないという形になっております。
ただ、飾り用の櫛はおでこと頭頂部の中間あたりに使われたことから、その人と
相対したとき正面からバッチリ見えるものでもありました。否応無く目に入って
しまうため、より良いものや美しいものを求められ、発展していったものと思います。
ざっとこのような流れがあったのですが、現代では日本髪を結う機会すらも無く
なってきましたので、現存するものだけを目にされたら、それは判らないですよね…。
まあ私も直接見た訳ではありませんから、かつてのことは書籍などで判断する
しかない訳ですが、おおよそこのようなことらしいです。
櫛 本鼈甲製琴と散り松葉柄蒔絵前櫛
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